Photo by Takayuki Monma

論文・論説

北海道の自然 第49号 滅びゆくスーパーコロニー 東正剛著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:1970年代、石狩海岸には約45,000巣からなるエゾアカヤマアリのスーパーコロニーが広がり、保存されるべき生物現象として1983年版IUCNRedDataBookに登録された。以来、このスーパーコロニーは「世界一大きなアリのコロニー」として知られるようになったが、あくまで一部のアリに見られる特異的な現象として扱われるに過ぎなかった。しかし、20世紀末から世界的に問題となってきたアルゼンチンアリなどの外来侵入アリ類の多くがより巨大なコロニーをつくることが知られるようになると、スーパーコロニーが重要な研究課題として注目されるようになってきた。特に、エゾアカヤマアリはけっして侵略的ではなく、あくまで極東の一部に分布する在来種であり、侵略的アリ類との比較対象として重要な研究材料を提供している。しかし、1980年代から本格化した石狩湾新港開発や札幌市の人口増加に伴う海浜植生の荒廃とともにエゾアカヤマアリの巣が急激に減少しており、スーパーコロニーの消滅が懸念、される。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 希少種キタホウネンエビの生息する融雪プール 守屋開著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:キタホウネンエビは、北海道では石狩海岸平野の石狩湾沿岸に平行に広がる幅lkm程度の防風保安林内の融雪プールにのみ生息している。石狩海岸平野は、約6,000年前の縄文海進の後に離水し、約4,000年前以降に融雪プールが形成するようになった。融雪プールは弱酸性の一時的な水たまりであり、水の存続期間が長いときでも夏には干上がる。
キタホウネンエビは低水温期に出現する北方系の大型の動物プランクトンであり、孵化してから約40~50日で成体まで成長し、乾燥や高・低温に耐える卵を産む。耐久卵は少なくとも数年間は休眠することが可能であり、孵化する能力がある。夏の高水温時に、湛水してもキタホウネンエビは出現しない。同様な生態を持つプランクトンの分布から類推すると、キタホウネンエビも水鳥の渡りによって北方から移動した可能性があることを調べる必要がある。生息域が極端に狭められている生物の保護には、流域全体の生息環境を保全する必要があり、子孫へ自然という財産を受け渡す義務がある。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 石狩砂丘のハラタケ類を中心とした菌類相 竹橋誠司著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:砂浜の菌類相は、世界的に知見の少ない未知の研究分野である。2005年から石狩砂丘の5地点で主にハラタケ類の定点調査を行い、地勢・植物の変化に伴う菌類の構成と分布、その発生時期や生理・生態を示すと共に、採集された新種、日本新産種、絶滅危惧種そして北海道から初報告となる5種の生態的、形態的特徴を紹介する。これらを通じて生態系豊かな石狩砂丘の環境保全を強く訴える。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 石狩海浜地域一帯の野鳥 樋口孝城著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:石狩川河口から石狩湾新港までの海浜地域一帯の野鳥リスト(25科94種)を示すとともに、地域内における環境ごと(砂浜域、港内域、沖合域、草原域、上空域)の鳥類の生息・飛来状況を概説した。
当該地域は、夏鳥の繁殖地、冬鳥の越冬地、旅鳥の渡り中継地として利用されている。鳥類相からみて特殊性は含まれず、普通の鳥たちの普通の生息・飛来を支えている地域であるが、環境保護などを通してのその普通性の持続が将来的課題として重要であろう。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 河川計画の合理化メソッド-基本高水問題の克服- 山本行雄著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:洪水は気象という複雑な現象により発生する。そのため客観的資料から将来の洪水規模や発生確率を確実に予知・予測をすることはできない。そこで治水対策においては「みなし」という手法が幅広く用いられる。本稿は基本高水問題が本格的に議論された千歳川放水路問題の事例に即して、①国土交通省の技術マニュアルにおける「見なし」の実際を考察し、②基本高水という概念と年確率という概念の論理構造を一覧整理し、③これによって河川計画を客観的に把握し検証する途が開かれることを示し、④基本高水は政策的な選択の対象となる候補群(ハイドログラフピーク流量群)として形成されること、⑤その候補群の中から最大ピーク流量を選択すべき工学的理由は全くないこと、⑥選択対象である数値群の中からどの数値を選択するかは政策的・政治的選択の問題であることを示す。以上を前提に千歳川放水路問題にとり組んだ市民団体が提案した政策手法を紹介する。この手法は国土交通省の技術マニュアルを活用しているので、全国の河川において政策の検証と合理的政策形成に実践的に応用可能である。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 札幌市の非科学的な水道水必要量予測-札幌市民は当別ダムを必要としない- 佐々木克之・安藤加代子著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:札幌市は、今後水道水需要量が増大して、2025年以降には現在の水源保有量では不足するとして、当別ダム建設に参画している。総務省は、札幌市の水道水需給予測は水需要の実績を踏まえていないという疑いを指摘した。それに対して厚生労働省は、札幌市の予測は妥当であると判断し、その説明を聞いた総務省も妥当であるとした。私たちは、札幌市の資料を用いて札幌市の水道水需給予測の根拠について検討した。その結果、人口将来予測、家庭用水道水および非家庭用水道水の需要が増加するとする根拠は、実績を無視したものであり、非科学的であると考えた。このことについて具体的に示すとともに、総務省が自らの指摘事項を再検証することを要望する。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 大規模林道の「中止」に寄せて-道路の見直しを求めた自然保護運動の半世紀 俵浩三著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:北海道における大規模林道(緑資源幹線林道・山のみち地域づくり)は、2009年に事実上の「中止」が決まった。これは近年の行政改革で緑資源機構(旧森林開発公団)が廃止された結果、林野庁の「緑資源幹線林道」が地方自治体の「山のみち地域づくり」に継:承されたことに伴い、北海道が継承の是非を検討し、中止と判断したものである。
しかし、この事業の本質を理解するには、いまから50年も前の高度経済成長時代に「大規模林道」が計画され、それが自然保護の逆風にさらされた経緯を知る必要がある。1960年代から1970年代前半の高度経済成長時代には、「開発優先」の価値観によって多くの開発プロジェクトが浮上し、大雪縦貫道路・士幌高原道路・日高横断道路なども計画された。しかし、高度経済成長時代の歪みとして公害・自然破壊が多発、その反動として1970年代からは「開発より環境」の価値観が市民権を獲得し、各地で自然保護運動が活発化した。
今回の大規模林道の中止には、1970~1990年代の自然保護運動で得た「遺産」が有効に機能したことを見逃せない。すなわち、北海道で最初の市民参加型の自然保護運動で中止された大雪縦貫道路が「林談話」を生み、士幌高原道路は「林談話」を有力な手段とした運動で「時のアセスメント(時代の変化を踏まえた施策の再評価)」を生んだ。そして「時のアセス」が「全国版」に波及した日高横断道路と大規模林道の再評価では、行政による再評価の不備を指摘して再再評価を求めた。日高横断道路の場合は再再評価の結果として中止、大規模林道の場合は再再評価寸前まで追い込んだ段階で緑資源機構の「敵失」があり、今回の「山のみち地域づくり」の検討に結びついた。
したがって、本文では大規模林道の中止を踏まえながら、「道路の見直しを求めた自然保護運動の半世紀」を振り返り、さらに今後の課題にも触れてみたい。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 風力発電の実態 鶴田由紀著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:環境にやさしい発電として世界的にその数を増やす風力発電施設。日本でも2009年末現在で、2,056MWの発電容量を持つ風力発電施設が建設・運営されている。しかし、イメージばかりが先行し、その実態はほとんど知られていない。近年、風力発電機(風車)は巨大化の一途をたどり、その大きさが原因で鳥類の衝突死や自然破壊を引き起こしている。また超低周波騒音の発生によって周辺住民を苦しめている。しかし、風力発電の欠陥はそれだけに留まらない。生み出される電力の不安定性と予測不能性のため、発電システムの一翼を担うことなど到底不可能である。諸外国同様、日本においても今後、洋上風力発電施設の増加が予測されるが、海上や海中にも生物は生息している。陸地が駄目なら海にという発想は安易に過ぎる。風力発電施設を建設することは、人にも自然にもメリットは何もない。私たちは風力発電の真実の姿を知り、これ以上の資源の浪費を食い止めるべきである。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 生態系の中で生きていくために-野糞に学ぶ 伊沢正名著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:自然保護の本質は生態系の循環をスムーズにすることと考える私は、菌類による分解に助けられて、野糞という方法でそれを実現してきた。正しい野糞をして土に埋められたウンコはどのようにして土に返り、生態系の循環に組み込まれていくのか。野糞跡堀り返し調査から見えてきたウンコ分解の実態を、そして資源=食料=命の元としてのウンコと野糞のすばらしさを紹介する。

資料提供元:北海道自然保護協会

論文・論説

北海道の自然 第49号 知っているようで知らないカラスの話 中村眞樹子著

発行元:一般社団法人 北海道自然保護協会

発行年月日:2011年3月1日

内容:

資料提供元:北海道自然保護協会

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